2013年10月5日土曜日

カゼに抗生物質


白血球のうち、好中球の機能異常で、「慢性肉芽腫症」という病気があります。簡単にいえば、バイ菌をやっつける機能が著しく低下しているので、幼少時期から重症感染症を繰り返す病気です。腸内細菌のうち、乳酸菌としてビフィズス菌という有名どころは皆さんも耳にしたことがあると思います。これら腸内細菌は人間が生きていく中で大事な働きをしています。慢性肉芽腫症では幼少期から抗生物質を長期に使用するので、腸内細菌のバランスが狂い、免疫系にさらなる異常が生じることによって、炎症性腸疾患を合併する率が高くなります。炎症性腸疾患とはクローン病や潰瘍性大腸炎で、日本の有名政治家が罹患していることで有名になりました。最近では、もともと免疫に異常がない人でも、幼少時期から抗生物質を使うと炎症性腸疾患の発症が増えることがわかっています。
 
のど、耳、皮膚、ときには血液検査などから細菌感染の証拠がある場合には抗生物質を使用した方が良いのですが、小児のカゼのほとんどはウイルスが原因です。カゼには抗生物質は無効なばかりか、先に述べたこと以外にも悪いことしか起こしません。2006年の日本小児科学会誌によれば、カゼに対して抗生物質の有効性はなく,副作用のために健康が妨げられることが書かれています。ずいぶん前から海外の有名小児科医療誌では、カゼに抗生物質を使用しても細菌二次感染の予防効果がない、仮に重症細菌感染症の初期でも,経口抗生物質の効果は期待できないばかりか診断の妨げになるとされています。
 
舟入病院の夜間に、「カゼで近くの小児科クリニックで薬をだしてもらったのですが、知り合いの看護師に『カゼなのに抗生物質をもらわなかったの!?』と言われました」と受診される方がたまにいらっしゃいました。そのクリニックは患者思いの良い小児科医だと思います。